「好きな音楽は何ですか、とか聞かれると困る」って、音楽が好きな人は嬉しそうな顔でよく言っている。
確かに、ある程度音楽が好きな人はジャンルなどほとんど意識せずに広く聴いているはずだし、そもそも何かの熱狂的なファンでもない以上、あの質問に即答することは難しい。
きっとここで「困る」と言うのは、一言で説明するのが難しいので困るのと、俺の音楽の趣味はハイレヴェルで奥深く、そして広大なのでそんなに簡単な質問で判断されたら困るゼェ、の二つの「困る」があるはずである。
好きな音楽の傾向はあるにしてもそれは非常に抽象的で言葉としてなかなか表現するのに難しいものである。特に相手との音楽知識に差があると思われる場合は難しく、大概「ロック」とか「昔のやつ」とか、ついには「洋楽」などといった至極大雑把な説明に着地するのである。
本当は「ストーンズっぽいやつ」とか「シューゲイザー系」など、音楽的教養というか、ある程度の共通認識があれば伝わるキーワードがあるのだが、それが使えないときに正しく分かってもらう労力は計り知れない。
「別に分からんやつに無理して正確に伝えなくてもいいじゃないか」
ごもっともなのである。
ただそれはご趣味が犬の散歩、Suicaはオートチャージをしているような心と財布にゆとりのある方の意見であり、一方で音楽鑑賞だけを心の拠り所とするヒクツなBoyzとなると、自分がどういう音楽を「纏(まと)っているか」ということをかなり重要視しており、この辺りの「見られ方」を強く意識するきらいがある。とってもとっても、難しいの子たちなのである。
学生時代の俺を思い出すと実に恥ずかしく、堂々と「オレは聴いている音楽でヒトを判断しているぜ!(えっへん)」などとシタリ顔で公言していたし、何ら特筆すべき才能も無い取るに足らない自分を大きく見せるのは聴いている音楽の質と量であると信じていた。
これは何も俺だけの特異な性質ではなく、音楽的知識が中程度になったあたりからこのような人物は急激に増えてくるはずである。(そしてこの「中程度」は驚くほど自己判断である)
いわゆる、語るために音楽を聴きだす時期であり、この時期に聴いた・買ったCDにはほとんど思い入れが無いことが多い。俺のCD棚にはそういうかつてヨコシマな気持ちで買ったアルバムが、CD棚に箔をつけるためだけの目的を果たすべく、今も幾つか陳列されている。
例えば、「好きなアルバムを10枚挙げて」という質問は「好きな音楽はなんですか」の大雑把さと比べると幾分か回答するのに楽かもしれない。
楽と言うより音楽好きはいつもどこかで積極的に10枚のオススメアルバムを発表する機会を窺っているものである。聞かれたくてウズウズしているはずである。
10枚あれば自分を音楽的な趣味を象徴するアルバムを適切にチョイスすることは出来るし、そこには自分の音楽的な幅の広さや、奥深さ、意外性などを充分含ませ、色をつけて伝えることが可能だからだ。
周りに自称音楽マニアがいたら、試しにこう聞いてみよう、「パイセ〜ン、好きなアルバム10枚挙げてみてくださいよォ・・?!」って。
返事はこうだ。
「え、ええぇ?!ったくぅ、
っざってぇなあ・・・まあ、10枚じゃあ
収まりきれないぜ・・・?」
聞きましたか。
まるで己のBIGスケールな器が収まりきれないかのような口ぶり。お前じゃないんだよ。CDだよ、コンパクトディスクだよ。
また、「面倒くさいなあ」などのたまうお顔をよくよく拝見すると嬉しそうなこと甚だしく、イラっとして「じゃあ別にいいッスよ」と返答したくなるお気持ちをグッと堪えしばらく待ってあげてもらいたい。
3日後(意外と早い)、全曲「ここがすげえ」解説付きのトップ10リストが渡されるはずである。
あと、付録でAmazonもビックリの「これを聴くヒトはこれも聴いています」という別冊リコメンド・リストも着いてくる。そして大概こっちの内容のほうが圧倒的に充実しているのである。
だがこのマイ・トップ10リスト、これを作成するにも愚かな自称音楽マニアの困った性質が頭をもたげ、何かと歯がゆい思いをするのが常。(だから別冊リコメント・リストで補填する)
本当に好きなアルバムだけを素直に選べずに、世間体を意識するあまりに背伸びしたり、選んだ10枚のバランス調整などを考えるあまり、しばしば本位ではないチョイスをしてしまうのである。つくづく難しい人種だと思わざるを得ない。
だからヒズ・トップ10リストを受け取ったら、すぐ捨てよう。
とまあ、ここまで自称音楽マニアの生態について説明を続けてきたが、実はこれ、ほとんどかつての俺のことなのである。あんときは本当にすいませんでした。
半ば懺悔のような形でこの恥ずかしい音楽マニアの恥ずかしい生態の一片をお伝えしたわけだが、このような生態を踏まえていただいたうえで、この流れのまま、今回は俺が愛してやまない音楽アルバムトップ10を発表したいというのが本題なのである。
ボクもオトナになったし、今なら正しい判断のもと、自分の気持ちに正直な、普遍的なリストが作れるのではないか・・・・、そういう気持ちで今からかつて何度も聞かれた「好きな音楽は何ですか」というクエスチョンに対するアンサーを出させてもらおうと思う。
細かいレビューは俺が書かなくてもAmazonで読めるのでそちらを参考にしてもらいたい。
あくまでどうでも良い思い出とともにお伝えします。
※ビートルズは除外しました
*****
T.REX/The Slider(1972年)

大学生の時に聴きまくっていたのがなぜかT.REX。
オリジナルアルバムは当然のこと、未発表曲、ソロ時代のブートレグなど狂ったように集めていたのが高円寺に住んでいたときで、T.REXは今だに何か一番混沌としていた学生時代の象徴である。
人生最初で最後のパチスロでたった3,000円の軍資金をビギナーズラックで35,000円に化けさせた俺は、その日のうちに文化の象徴、ターンテーブルを買っていた。喜び勇んで近所のレコード屋でステータスシンボルのレコード漁りに興じ、そして最初に買ったレコードこそこのアルバム。
「うーん、これは良い、CDで買えばよかった」など、元も子もないことをつい口走り、やはり俺は生音とかどうでもいいから、結局CDのほうがとても使いやすいのであった・・・・。
Spanky And Our Gang/Without Rhyme Or Reason(1968年)
「ギターポップ、ネオアコ、ネオモッズ、パワーポップ、英国系ロック、ソフトロック」
ハードロック、ヘビィメタル、プログレ、フュージョンをダサい洋楽とするならば、これらはいわゆるオシャレ洋楽であり、オシャレ女子洋楽ファンとの確かな接点が用意されていた。
渋谷系と呼ばれるカルチャーに溢れた人々にリンクするこうしたオシャレ洋楽にあやかろうと、俺も大好きだったプログレを捨て、ネオアコ、ソフトロック、モッズを聴いていた時期が確かにあったのである。
このアルバムは、そんな不純な動機で聴き始めた俺すらも改心させた、ポップセンス溢れる素晴らしいアルバム。細野晴臣もカバーした50sの名曲「香港ブルース」のカバーだけでも聴く価値がある。最高の1曲だと思う。
おかげさまでそれなりにオシャレ洋楽には詳しくなったが、よく考えたら女性はもちろんのこと男性の知り合いも居らず、また一つ、狭い風呂無しの小部屋で無駄に音楽の幅を広げただけであった。
Paul Mccartney/RAM(1971年)

小さなレコード屋で流れている曲は大概レジで無愛想に座っている店員が選んでかけているモノである。
自称音楽マニアはこのとき店員がかけている曲を「いいな」と思ったとしても、それを「この曲良いですね、何ですか?」尋ねることに強い抵抗感があるもの。何だろう、敗北感というのだろうか。難しいね、バカだね。
だからどうしてもというとき、最低でも「この曲、何でしたっけ?」とさも「ちょっと忘れちゃいまして・・・」的な聞き方をするわけである。
ポールマッカートニーのRAMというアルバムも同じ出会い方だった。「この曲、何でしたっけぇ?」と尋ねたのはディスクユニオン御茶ノ水店だったのだが、そこで買うのがシャクだったので「あ、そうだったかあ」などブツブツ言いながら店を出て、買ったのは新宿店。難しいものである。
というわけで、それくらいこのアルバムは名盤であると伝えたい。
Of Montreal/Satanic Panic In The Attic(2004年)

俺はポップミュージックが好きなのである。捻りの効いているのが特に良い。
Of Montrealは90年代後半からずっとインディーズかメジャーなのか良く分からない地味な活動をしている、知る人ぞ知る実力派バンドである。
彼らはかなりのアルバムを出しているバンドなのだけど、過去のアルバムはどれも「惜しい」作品ばかり。何かが物足りなかったのである。
もっとこういう楽器つかって、ここでコーラス入れて、みたいな事を勝手に考えてあげていたもので、完全なエア・プロデューサーである。
このアルバムを聴いたときは「お、君らやっと分かったな」という感じの何か分からない感動があった。「ワシが育てた」に似た感情とでもいうか。いやこれ、音楽好きな人なら一度ならずやったことはあるはずだと信じたい。
というわけでOf Montrealの皆さん、偉そうなこと言っててすいませんでした。ボクはバンドをやってないばかりか何ら楽器も出来ません。
お詫びに言います。このアルバムは最高です。
David Bowie/Ziggy Stardust(1972年)

曲も最高だが、デビッド・ボウイの場合、完全にこの人物自体のファンである。
理由は色々あるけれど、一番はルックスだ。イケってるメン度はロック界随一ではないだろうか。年齢とともに漏れなくデブになり我々を悲しませるミュージシャンが多い中、デビッド・ボウイは相変らずの細身をキープしている。
むしろ近年、ドンドン生気を失い、痩せ細りながら「アフリカに食糧を!」っていう姿に、まずはお前が食えと言いたくなるレベルである。
で、このアルバム。正式名称は「
The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」なのだが、そんなことには誰も付き合っておられず、略して「Ziggy Stardust」と呼ばれている。
このアルバムは他の連中とは一味違うデビッドさんが考えた徳の高いSFストーリーであり、要約すると、
「あと5年で世界が終わる!ヤバイ!」
「私が助けてやろう、私の名前はZiggy Stardustだ、あと後ろにいるのはSpiders from Marsだ!」
「すごい、Ziggyさん左手でギターをやってのけている、この世に希望を持ったよ!」
「はっはっは、そうだろう私を崇めなさい」
「さすがやーZiggyさぁん」
「はっはは、この星は悪いようにはせんよって、酒と女もってこい、あと白い粉な!おっと、言うても大田胃散やないでーアレやでアレ〜(ニヤリ)」
「(Ziggyさん最近血尿でヤバいらしいで・・・)」
「ううう・・・Ziggy体調悪かし淋しいけん、自殺しようかなぁ」
という話である。
曲自体の素晴らしさは言わずもがな(ロック史に残る捨て曲の無さ!)、そういうストーリーも意識するとバッチリハマった素晴らしいアルバムだと分かるはずである。
The Beach Boys/Pet Sounds(1966年)

ビーチボーイズを軽いサーフサウンドだと思い込み、見事にスルーしたまま20歳になり大変な大損をコいた。
特に1966年〜69年の間に発表された4作は素晴らしく、中でもこのPet Soundsの出来ときたら、当時大学4年生、留年と極貧に喘いでいた俺がドラフトワンをチビチビ飲みながら聴いて謎の涙を流したほどである。
就職活動中、エントリーシートにこのPet Soundsの感想文を書いたらまさかの書類通過を果たした会社があり、「人事にロックファンがいる!勝算アリ」とノリノリで面接に挑んだら「では、自己PRを」と至極普通の面接でアウアウになったのも良い思い出だ。
家に帰って、このアルバムでもっとも美しい曲「God Only Knows(神のみぞ知る)」を聴いて、「俺の選考結果のことだ・・・!」と目を輝かせた俺は、後に「自己PRを」との質問に「Amazonのベストレビュアーです!」というイカしたアンサーソングをカマして失笑を買ったことがあることでも有名である。
つーわけで、Pet Soundsの素晴らしさは充分お分かり頂けたかと思う。
Electric Light Orchestra(E.L.O)/Out Of The Blue(1977年)

奥田民生がE.L.Oの大ファンなのだそうだ。
彼が作ってPUFFYが歌った「アジアの純真」を改めて聴くとE.L.Oのオマージュであることがよくわかる。俺がE.L.Oについてアレコレ説明するより「アジアの純真」っぽい音楽と言ったほうが分かりやすいかもしれない。
E.L.Oはほぼ毎年アルバムを製作していたが、1976年〜80年の間、一切駄作を出さないといういわゆる「スターをとったマリオ状態」に入る。
そういえばE.L.Oといえば、音楽的にもマリオがスターを取ったときの疾走感やキラキラした華やかな雰囲気で溢れており、この「スターをとったマリオ」という表現は的確かもしれず、自身の表現力の鋭さに身震いがする次第である。
このアルバムはそんな名作乱発期の中でも1位、2位を争う名作。個人的には「Mr.Blue Sky」「Sweet Talking Woman」という男女を表す2つの名曲が一緒に入っているだけでも幸せです・・・!
The Kinks/Soap Opera(1975年)

キンクスはビートルズ、ローリングストーンズ、ザ・フーと並んで英国4大バンドと呼ばれているがキンクス以外の三つと比べると知名度やヒット曲は著しく少なく、三大料理における「トルコ料理」のような「へえ」感がある。
60年代にグループサウンズ、モッズなどで人気となったバンドの多くは、70年代に近づくとキャーキャー言われるだけに飽き飽きし、「俺たちこんなことも出来るんだぜ」とばかりにこぞってコンセプト・アルバムなる、アルバム全体で一つのテーマ(生きることへの苦悩、理性と本能とは、アフリカがやばい!など)を取り扱うワンステップ先のバンド活動に勤しむようになる。これがフミヤートの背景であり、堂本剛も今コレである。
そんな中、キンクスも「俺も俺も」とコンセプトの荒波に乗り出し次々とコンセプト・アルバムを発表してくのだが、その扱うテーマときたら、「学校行きたくない!」とか「酒が美味い!」とか「イギリスの田舎最高!」など、かゆいところに手が届く、実用書のようなラインナップが多い。(一連のアルバムは登場人物が繋がっており一つの作品と見るむきもある。)
Soap Operaはその中でも「仕事めんどくさい!」をテーマに扱ったミュージカルチックな作品。会社員が「俺は実はロックスターなんだ」と思い込み、現実に戻る様をロックとミュージカル音楽の融合の中でコミカルに表現している。
10cc/How Dare You!(1976年)

邦題がなぜか「びっくり電話」とビックリするほど適当なことでも有名。
他のバンドとは違った少しスれたポップ・ミュージックが特徴で、近いのは唯一Queenぐらいだと思う。ワシらは他のポップ・ミュージックとは違うよ、オトナのポップスだよ、友達は少なくていいよ感が出ていて、「ああこの人らボクに似ているなあ」と勝手にシンパシーを感じる次第である。言っておくけど俺は友達は欲しいタイプである。
元々レコード屋でジャケット見て気に入った、いわゆる「ジャケ買い」したアルバム。たまたまびっくり電話では成功したが、基本的にジャケ買いは危険である。ただ外見だけを見てインスピレーションのみで決めるため失敗の確立は格段にUPするからだ。
だが、視聴をしたり、確かな情報を元に確実に良い作品に出会うほうが効率的で良いのだが、明らかに買って失敗した作品にへこたれず、強引に聴きこんだ後に「だが、いいところもある」と自己暗示にかける技術だって必要だと思う。社会に出て役立つのはそういう技術ですからね・・・!
The Zombies/Odessey And Oracle(1968年)

特に変化球もなく、淡々と凄く良い曲が続くだけのアルバムとしかいいようがなく、誰でも作れそうな単純な曲ばっかりなんだけど意外と無いなあという感じのアルバムである。
一番好きなアルバムはと聞かれたらこのアルバムと言うことに決めているのだけど、音楽に限らず何でも「一番好きなもの」と言うのは予め決めておく必要があるように思う。
一番好きな映画は、と聞かれたら最近では「タクシードライバー」と言っている。一番好きな食べ物は結局コロッケであり、一番嫌いなCMは?と言われたら「
ガンガンガン速のCM」で即答である。
好きなものを即答できる人が羨ましい。人に好きな○○は?と聞かれてスグに答えられないのは残念なことだ。
今俺もいくつか一番好きなものを思い出そうとしたが、今挙げたものしか思いつかなかった。その中に堂々、ガンガンガン速が入っている俺って一体・・・
今、自信を持って言えるのは、俺はコロッケのことが本当に好きだと言うことである。
というわけで、今日は一体何のお話だったでしょうか。またよろしくお願いします。
******
・x・ぼくののうみそ、今回で800回目の更新です。
引き続きよろしくお願いします。