ぼくののうみそ-・x・

爆弾魔・N村
俺の中学には爆弾魔が居た。名前はN村。

「爆弾をつくりそうな奴」として世間一般的に考えられているような外見・行動パターンを持つ人間で、頭は良かったが友達がおらず、いじめられている訳ではなかったが、誰も話し掛けようとはしなかったような、そういう感じ。

彼は学校内でサバイバルナイフを二本所持していた。足のところに一本、腕のところに一本。
それが何か問題になったという記憶はなく、「あいつはナイフを持っている」と皆当然のように知っていた。それは実に平和な時代のこと。

N村君がヤンキーの女5人に「きしょくわるいんだよ」と言われ、絡まれているのを目撃したことがあった。俺の中学の女ヤンキーは市内一のタチの悪さ、その迫力はなかなかのもので、ヤンキーに囲まれたN村君の姿は詰め寄られるに従い次第に見えなくなる。
だが一瞬、N村君を囲むヤンキー女の輪が「きゃー」という女子が本来持つ爽やかな悲鳴とともにワッと広がったのが見えた。
ヤンキー女の輪が広がり、中心に居たN村くんが遠くの俺にも目視出来るようになって初めて、彼が二刀流でサバイバルナイフを振りかざし、戦士のようなポーズをとっているのが分かった。
ヤンキー女は「ぎゃーーこえーー」と半分冗談、半分マジで方々へ散っていき、残ったN村君だけが一人振り上げた拳を降ろす事が出来ず、まさに言葉通りそのまま振りかざしたサバイバルナイフでポーズをとり続けていた。
俺は遠くからそれを黙って眺めていた。それは実に平和な時代のこと。

彼が爆弾を作ったのは高校受験の前のことであったように思う。
地元の海水浴場で爆弾が爆発した、という噂があり、花火用の火薬でそれを製作した疑いでN村君が警察に呼ばれたと聞いた。なかなかの規模の爆発だったらしく、超ローカルなものだが、新聞にも載った。被害者は無かったが、とりあえず蟹が死んだらしい。
一説には警察じゃなく生徒指導室止まりだったと言うものも居たが、なぜかこの辺り定かでない。受験でそれどころでなかったのか、巧みな情報の統制の結果なのか。

彼がなぜ浜辺で爆弾を爆発させたのか。
彼の中の微かな人間性が思いとどまらせたとか、誰かに自分の中の狂気を分かってもらいたかったとか、蟹が憎かったとか、もっともらしい説が唱えられた。

俺の見解は違う。
あれはあくまで試作。つかまえてなきゃあ、きっと学校でやってたぜありゃあ。

その翌年の夏、地元で彼が一人で花火を買っている姿が目撃されている。 彼に友達はいない。
| fabricio zukkini | 人物 | 23:23 | comments(3) | trackbacks(0) | pookmark |
骨折プレイボーイ シンジ
中学のバスケ部にシンジという男が居た。
バスケットは素人であり、それを補う運動神経も不十分であったシンジ。極度の近視であり、登校中、木に正面からぶつかったのを目撃したときは衝撃だった。
部活は休みがちで、1年の終わりにあっさり退部してしまったため、部活中の彼についてほとんど印象に残っていない。
このようにシンジは見事なまでの幽霊部員だったのだが、彼が部活を休むときに毎度理由にしていたのは常に骨折であった。

始まりも骨折から。入部して間もなく、シンジは下校中、自ら転倒した際に腕を骨折し、長期にわたって部活を休むことになる。
骨折からようやく復帰してきたシンジだったが、半月もしないうち、部活の練習中にまたしても骨折。ボールをキャッチしこね、指を骨折してしまったのだ。
指を骨折している最中、さらに別の箇所を骨折したという連絡があった。
寝ているところを酔っ払って帰ってきた父親に蹴られ、わき腹にヒビが入ったのだそう。とんだ珍プレーである。

このようにしてシンジは中学3年間、バスケ部を辞めた後にも常に骨折をしていたようである。
最初の頃、「そんなに骨折するはずが無い」と、シンジの骨折を真に受けず、部活をサボりたいためのウソだと言う者は多く、俺もやはりそう思っていた。
普通の人なら一生に何度するか分からない骨折を次から次へとっかえひっかえ。あるときには二股を掛けたりして、シンジは骨折に不自由しないいわば骨折プレイボーイだったのである。

そんなシンジとたった一度だけ、共通の友達が居たツテで一緒にゲームセンターへ行った事がある。
忘れもしない、そこには「壁を殴るとエッチな景品がもらえる」という「パワー&エロ」で構成されたバカが考えたようなクソみたいなゲームがあった。
詳しく説明するのも脱力モノだが、このゲーム、殴った力が電飾に彩られたデジタル式の目盛りに反映され、「ドゥルルルーン」という派手な音とともに上昇する目盛りが、「FEVER」と書かれた範囲の中に収まったら大成功。晴れて景品である古〜いAVとご対面、という大変カスみたいなシクミなのである。

「強すぎてもダメ、弱すぎてもダメ」と説明しながらゲーム台に向かったシンジ。
AV目当てに勢いよく壁を殴った次の瞬間、シンジは骨折した。
「あふあおふ、あふおうふ」なる、エラ呼吸をメインにして生活するか弱い動物の断末魔のようなとっても地味な悲鳴がゲーセンに響く。
シンジが骨折したことよりもシンジの悲鳴がとても地味だったことに大変驚いた。ともかくこの男は確かに、そして簡単に骨折した。ウソではなかったのである。

シンジとの思い出はそれが最後。その後なし崩し的にバスケ部を辞めたシンジとは完全に疎遠になり、最後にその名前を聞いたのは中学卒業後、

「シンジが俺たちの卒業アルバムを3,000円で売ったらしい」

という割とどうでも良い噂話に登場したときであった。





| fabricio zukkini | 人物 | 23:00 | comments(2) | trackbacks(1) | pookmark |
イシイ君
今日はイシイ君という男について書いてみたい。
本人の許可を得ているし、堂々とありのままをお伝えしたいと思う。

イシイ君との出会いはこのブログ上で企画した「男祭り」だ。AV女優の方のイベントに参加するというだけのこの企画、4人しか参加しなかったが、その割には大いに盛り上がった。
そのときのイシイ君、初対面ではあったが正直第一印象は芳しくなかった。午前10時頃の集合だったが「さっきまで飲んでいた」と言うだけあって顔が真っ青。さらに目がすわっている上、全身黒で揃えた出で立ちからは邪悪なオーラが出ていた。24歳と言っていたがなんかそうは見えないし、シャバの方ではないムードがそこかしこから漂っているのである。
イシイ君はあまり言葉を発せず、一体何を考えているのか全く分からない。それゆえついに後半、「イシイ君はAV女優サイドが派遣したスパイでは・・・」という説が流れてしまう。我々が余計なことをせぬよう監視する、スパイでは・・・・と。
結局本当に何も考えていなかったということと、とりえあずいつも目がすわっていることが分かるまでイシイ君は「スパイ」の濡れ衣を着せられ続けた。これはイシイ君にわびねばなるまい。

出会いはそのような具合だが、その後も俺の開催するオフには高頻度で参加してくれるイシイ君。失礼なスパイ疑惑もアッサリ晴れると、今度はそこから発せられる身の上話の質の高さには、聞くたびにその魅力に引き込まれるばかり。
今ではブログリンク先のフェロモンさんと共に不動の高円寺飲みパートナーとして、毎回全く同じ話をしてはホッピーを飲む日々である。(話だけでなく店も毎回同じで大将の2号店と3号店をひたすらローテーションするのみ、デジャブの日々である。)

イシイ君の持つオモシロエピソードは色々あるのだが、そのひとつとしてまずご紹介したいのが、彼のライフスタイル。驚くなかれ、かつてイシイ君は昔一畳の部屋に住んでいたのだという。一畳、たたみ一畳である。
場所は葛飾の立石。10畳程度の部屋を二段ベットや仕切り板で強引に10分割して作られた部屋の、その押入れの2階がイシイ君の部屋だったという。(驚愕のHPはこちら)
昔歴史の教科書で似たようなものを見たことがある。たしかあれは奴隷船のイラストだったような。
とはいえさすがに一畳の部屋には我慢の限界が来たイシイ君、それでも数年そこで暮らした後、そろそろまともな部屋に住みたいと一念発起、とうとう一畳の部屋を捨て新しい住処を得た。
それがなんと!二畳の部屋。おや!一畳から二畳、二倍である。だが待って欲しい。刻むぜイシイ君。最近じゃヤドカリでもここまで小まめな引越しはしないのではないか。

そして今、イシイ君が今住んでいるのは何と6畳の部屋。「広すぎて半分以上持て余していますね」という彼の目はマジだし、すわっている。

イシイ君は妙に風俗に精通している。精通しているくせに、齢25で「今ED気味なんです」のアイロニー。なので、今は知識のみで最近はもっぱら情報収集を行うのみに留めているのだそうだ。
そんなイシイ君におススメ風俗を聞いてみたところ「上野にある、脱北者の風俗すね」と至極当然のように語ってくれた。僕たちはただエッチな話がしたかったのにまさか出てきた「脱北」の、冬の夜空に放たれた銃声のようなこの響き。風俗だからって脱ぐのは何も服ばかりではない。この場合、脱ぐのは北、そうアノ脱北である。
「どこかにあるらしいっすよ」というイシイ君は、現在、EDである。

イシイ君に女性の趣味を聞いたところ、「年齢でいくと・・・」と、上限がなぜか「53歳」だった。「54歳はダメなのか」と問いただすと黙ってうなずくイシイ君。いやあここでも刻むぜイシイ君。この1年の差、女性にはきっと何かがあるのだろう。
その後「女性の母乳の味は年齢で変わります」と真顔でそう言うと、頼みもしないのに渋谷にある母乳の飲める風俗、その名も「チチパラ」を教えてくれたイシイ君。イシイ君は親切な男だ。そして彼の女性趣味を紐解くヒントはこの店にあるのかもしれない。
もしあなたが、ツイッターでイシイ君を発見してしまったら、そのときは「ええと.....渋谷の、アノ風俗、えっと、、名前なんでしたっけ?」と試しに聞いてみよう。「チチパラですね。」とbotのように返って来るイシイ君からのお決まりのリプライに、アナタは感激するに違いない。(ただ、本人の希望でtwitterアカウントは秘密です)

また、奇跡的にイシイ君とフットサルをする機会があった。
イシイ君はなぜかフットサル場に完全場違いなギラッギラのスカジャンで現れ、さすがにプレイ中は脱ぐのかと思ったら、オヨヨ、そのままピッチへ。こらこら、イエローカードじゃよ。
コホン。だが、待って欲しい、背中を見るとそこには堂々「Japan」の刺繍。「おお、なるほど、間違ってないぜー」とこれにはJFAも完全納得。プレイは続行された。
(ちなみにイシイ君はトーキックが妙に上手かった)

あるときには、花見をかねて阿佐ヶ谷でバーベキューを企画したことがあった。
参加してくれたイシイ君は「高円寺の業務用スーパーで買いました」というプロ仕様の巨大ソーセージを1kgも調達してきて参加者を沸かせた。
沸いたのは参加者、しかも最初だけ。肝心のお湯はそこまで沸いてくれず、プロ仕様が冷凍だったのもあって、持参したバーナーは明らかな火力不足とくれば、自ら責任を取って半生を食べるイシイ君。険しい顔で「おいしい」と言っていた。

このように、イシイ君は実に人間味あふれる好人物なのだが、ひとつだけ、どうしてもひとつだけ気に入らない部分がある。
いつもの高円寺での飲み会しかり、BBQや花見といったイベントしかり、ひとしきり飲み会が盛り上がったあと、お開きとなっておのおの帰宅となり、ふとtwitterのタイムラインを見てみると、必ずそこにはイシイ君のアカウントによる「ふう、やっとひとりになれたぜ」的なツイートがある点である。
イシイ君は高円寺の決まった店でよく一人で飲んでいるのだが、我々の飲み会後、そこで「さて、飲みなおすか」を高らかに宣言するのである。イシイこの・・・


いかがだっただろうか。イシイ君。今回は主なネタしか書いていないが、細かい話はまだまだ。
最後に一番大事なことをお伝えし忘れていたのだが、「イシイ君」は本名ではなく、HNなのだという。実に紛らわしい男である。一体何なんだ。

そんなイシイ君、フェロモン、俺で、週末ともなればtwitterを使いメンバーを募集するのだがこれまた、見事なまでに誰も来ず、集まるのは必ず3人。また、たまにやってきた虎の子の新メンバーを酩酊状態で迎え入れその後音沙汰が無い始末。そういうわけで僕らは絶賛メンバー募集中なのである。

| fabricio zukkini | 人物 | 21:18 | comments(8) | - | pookmark |
田中君
同じ支店ではないが、同じ会社の別拠点に1つ年下の田中君という男が居る。少し変わった男なので先日彼と初めて一緒に客先を回ったときのことを報告したい。

俺の運転で、助手席に田中君。別々の営業所に勤めており、普段一緒に仕事をする事は無いのだがその日は訳あって終日一緒に動く事に。普段1人で行動する事が多い上に、今の拠点には年の近い社員が居ない事から、一歳しか違わぬ彼とのドライブは非常に楽しいものであった。
音楽、スポーツ、学生時代の話など、世代が近い為か話がよくかみ合い営業中の移動であることを忘れて色々なことを喋っては、ときおり下品な冗談も交えつつゲラゲラ笑う。久しぶりに楽しい。

午前中幾つか客先をまわると、あっという間にお昼飯どき。腹も減ったのでここらでお昼に、ということで「田中君、そろそろお昼だけど何が食いたいかね」と彼の希望をうかがう。
すると田中君、「そうすね、ラーメン系すね」という。

「ラーメン系ていうと、ラーメンだよね」と確認すると無言でコクリ。俺も無言でロードサイドの日高屋へイン。案の定彼は黙々とミソラーメンを食べていた。


午後、お腹も満たされ午後の営業に繰り出す。例によって車内では2人の若者による雑談が繰り広げられていた。
「この前野外ライブイベントにいったんすよ」という田中君。比較的お固い我が社においてこのような若者っぽい話題が出た事に軽く喜び、「お、何の?!」と食いつく俺。
すると田中君、「そうすねー、レゲエ系すね」という。

《レゲエ系とな?!》

レゲエ系て、レゲエの一択問題じゃないのか、と言おうとしたが思いとどまった。こちとらレゲエの事に明るく無く、ひょっとしたらレゲエが、その中で細分化された今ではある種の総称的な使われ方をしているのではないか?!という考えによるものだ。
というわけでその「レゲエ系」とやらがいかなるものか聞いてみると、「え、レゲエってしらないすか?」と軽くニヤけられた。ワツァーップ?みたいなジェスチャー付きで。
「レゲエは知っているが、君がレゲエ系というからさ、ふん」などとはとても言えず、「ええと、じゃあそうっすね、レゲエはまず抵抗と闘いから始まり・・」と、田中君にレゲエの思想と歴史を延々レクチャーされてしまう。本当は次に訪問する客についての事前の打合せがあったのに「行動様式」とか「愛と自由、貧困と抵抗」なんてことを色々吹聴されたせいで、嗚呼商談なんて、こんな目先の小銭を稼ぐ為の商談なんてビーオーラ〜イ、って本当にどうでもよくなりそうだった。
レゲエ聞きながら営業出来る田中君器用すぎる!


とまあお気づきの通り、田中君は何かにつけて「〜系」と付ける事が非常に多いわけ。えっ、それしか無いやん、というものにも漏れなく「〜系」がついてくる。オオアリクイとかもうオオアリクイしか居ないはずなのだけど田中君にかかれば「オオアリクイ系っすね」
決して頭が悪いわけではない。大学だってそこそこのところを出ているし、それ以外は本当にしっかりしている。仕事もできるようだ。
だえけどもそういう細かな言葉にビンカンな俺はこの辺りがヒジョーに気になってしまい、あとは何ら問題ないのだけどそのときだけはさすがにちょっと気持ちが悪いのである。

好きな女の子のタイプについて俺が聞くと、もう一つの口癖「そうすね」を前置きに入れたあと、「『おめーウゼえよ』とか言いつつ、しっかり家事とかこなす見た感じ遊び人系」と真顔で、至って真顔ではっきりそういう田中君。こっちは至ってポカーンでしたが。
それはつまり『おめーウゼえよ』とかいいつつ、しっかり家事をこなす見た感じが遊び人の、ズバリ今のお前の彼女(ないしは元カノ)のことじゃねえのかと言いたかったが、「ああ〜、ソッチ系か」とやむを得ず同調。ビーオーライです。
そーんなピンポイントで細かな個々人が培ってきた性質を一つの系統にしてもいいのなら、俺の実家で飼ってる雑種のゆめちゃんにだってさ、「極めて雑種に近い、微妙なサイズで毛色も微妙、つかみ所の無い雑種のような性質で散歩のときに良く前足にリードが絡まり『ヘイ!取りな!』と言わんばかりの顔でよくこっちを見てくる系の種類です」なんて具合にめちゃくちゃな血統書が与えられても良かろうよ。違うかい、どうなのかい。ビーオーライなのかい。
いやあもう、ついつい取り乱しそうです。

その後も「この前のA4系の申請書にぃ」などと、聞いたことも無い魅惑のワードを次々ひねり出す田中君。その日一日一緒に居ただけなのにいつの間にか彼の言葉遣いがすっかり移ってしまったのか終いにはついついこっちも「Ustream系のサイトでさあ」と言ってしまう始末。

すると彼は言う「Ustream系て、ユーストのことすよね、てかそれしかなくないすか(笑)」

俺は至ってビーオーライである。
| fabricio zukkini | 人物 | 20:16 | comments(0) | - | pookmark |
武田君
中学のとき、武田君という男がいた。
武田君はいわゆるデブで、中学二年当時ですでに体重は恐らく100kgを越えていたかと思う。(身長も170cm台後半ありましたが)
ふくよかな体型に武田という苗字。それをもじって武田(ブタ)と呼ぶ大変心ない人も多く、実は俺もその一人だったのでよく武田君に追いかけられていた。
また、太っている中高生の宿命というべきか、一部の心ない連中がよく武田君の背後から思いっきり乳を揉みしだいては逃げるなどし、実は俺もその中の一人だったのでよく武田君に追いかけられていた。

このように、太っていると何かと心ない連中からちょっかいを受け易いのだが、武田君はその都度、すでに上に書いたように全力で追いかけて来ては巨漢ならではの怪力で強烈な仕返しを食らわせていた。武田君は太ってはいたが異常に足が速く、追いかけられた際に逃げ切れた回数のほうが少ない。
ただそうやって追いかけてくるからこそちょっかいを出したくなるというもので、従ってちょっかいを出す、追いかけられる、のやり取りはほぼ毎日行われていた。
友達同士のおふざけ。お互い楽しんでいたのだし、別にそれでよかったわけである。

ある時のこと、いつものように武田君と遊んでいるときに、たまたまいつもと逆で俺が武田君を追いかけるというシチュエーションがあった。
そのとき、俺はあることに気付いてしまった。

「武田君ってのは、追いかけてくるときは足が異常に速いのに、逃げるとなるとめちゃくちゃ遅いわ」

この話を友達にしたところ、「そういえば確かに・・・」と、皆一様に心当たりがあるような事を言う。ならば善は急げである。
それから程なくして、昼休みに嫌がる武田君を校庭に連れ出し、追いかけたときと逃げるときでタイム差がどれくらいあるかを測定することにした。実験方式は定番の50m走である。

4、5人が集まり実験に立ち会う。
まずは一本目、逃げるときの場合。嫌がる武田君を「人類の新たな可能性を知る為」と説得し、走らせる。
一応逃げている設定なので俺が走る武田君の後ろから「コラーまてー」と叫びながら走る。なんと滑稽な有様かとお思いだろうがやってる当人達は至極本気である。

タイムはまさかの10秒台。いやあなるほど、こいつは遅い。普通に考えればこれに追いつかれる訳が無い。やはり彼には人を追いかけるときにだけ生じる謎のフォース(力)が存在するのだ。次は二本目、先ほどの逃げるときのタイムを次の追いかけるときのタイムと比較すればそれが明かになる。

さあいくぞ、では二本目だ、見せてみろ貴様の力を・・・!というとき、一本目を終えゴール地点から元のスタート地点へ戻ってくる武田君が手をバッテンにして歩いてくる。どうやら何かアクシデントがあった模様。
聞けば、制服着たまま50m全力で走ったため「またずれ」したらしいのだ。

こうして世紀の実験も答えは風の中、武田君には本当に悪い事をした。
| fabricio zukkini | 人物 | 22:13 | comments(3) | - | pookmark |
メーカーの梅沢さん
取引先メーカーに梅沢さんという人がいる。年齢は俺より1歳下。
小太りでメガネ、1歳下らしいのだがもっと若く見える。どうやら服装には無頓着で、いつもよれよれのYシャツに寝癖のついたままの髪の毛で俺の前に現れる。
いつも絶やさぬ素敵な笑顔。キラリと光る黄色い歯。「ずっと彼女が居ません」と彼は言うが、正直それも納得出来ると言わざるを得ない。

彼女が居ないと段々そうなってしまうのか、そうだから彼女が出来なくなってしまうのか。彼の行動には理解を示せない部分が多い。一人で生きて来た男の性か、非常にマイペースである。
聞いたことも無いアニメの声優がとても好きらしく、何度か「イベント」と称するものに行く為に仕事を休んでいたりする。他には良くわからない小説家の「追っかけ」というものをやっていて、何度か「イベント」と称するものに行く為に俺との仕事上の約束をキャンセルしている。
仕事の付き合いで飲みに行く事が何度かあったのだが、その度に、帰り道必ずゲームセンターへ連れて行かれ、梅沢さんがダンスダンスレボリューションをやっているのを延々見学させられる。ケータイいじりながら「凄いね」「上手いね」「カッコいいね」と、俺が棒読みで言ったとしても「そんなことないですよぉ」と喜ぶ彼には全く気付かれない。
面白い漫画本があるから今度貸します、と言われたので社交辞令で「じゃあ今度持って来てよ」と言ったら全20巻を手提げに入れて「はい、どうぞ」と持ってくるようなお茶目な彼だが、俺は嫌いではない。
相手のことを考えず突っ走る特有の性質を取り上げて「オタク」と安易な言葉を当てはめてもいいが、それはしたくない。
彼の心は澄んでいる。オタクなどではない。興味に一生懸命、そしてそれを他人とも分かち合おうとするLove&Peaceの精神に満ちている。ただそれだけ。そう思いたい。
「空気なんて読むな!」とみんなが大好きな競泳の北島さんだって言っている。

女子はよく言う。
「心の奇麗な人が好き!」「笑顔の素敵な人が好き!」「彼氏の条件は、嘘つかない人!」「自分を持っている人!」
じゃあ梅沢さんですね。

そんな梅沢さんなのだが、もの凄く気になる事がある。
基本的には控えめでどんなときにも笑顔を絶やさぬナイスガイと認識しているのだが、彼の行動の中で唯一違和感を持っている部分、それが何かあれば自分の友達の話をしてくることだ。知りもしない赤の他人のどうでもいいエピソードをだ。
いやいや、「イベント」で約束すっぽかされたり、ダンスダンスレボリューション見学させられたことは我慢出来て、友達の話ぐらいで違和感とはこれいかに、と思われるかもしれない。
実は我慢ならんのは話を聴かされることではない。本当に堪え難いのは、そんな梅沢さんが、友達の話をする際、友達のことをなぜか毎回必ず「ダチ」と、80sスクールっぽい呼び方で呼ぶことに他ならない。

小太りメガネでよれよれのYシャツ。寝癖の残った頭を掻きながら笑顔で「昨日、私のダチからの電話でですね〜」なんて言われてご覧なさい。虫酸が400mリレー始めますよ。
ただし不思議なのが「ダチ」以外、例えば「マッポが」とか「ニール遊びが」なんていう具合に、全く他のヤンクスワードは出てこないこと。それを見る限りでは彼が決してヤンクカルチャー全般を憧れの対象として見ているわけではなく、ヤンクス用語全般を努めて使っているわけではないようなのだ。あくまでも「ダチ」のみ。
梅沢さんは一人称が「私」なのだが、「私」と「ダチ」のミスマッチは実に違和感たっぷりだ。

で、ついこの間のことなのだが、

「先週末、私、ダチ公と××○○という漫画家の握手会へ行ってきましたよ〜」

って、ついにあんチクショウ「ダチ公」っていうたからね。ダチ公ですよ。今名前に「公」がつくのは梅沢さんのダチ公か伊達政宗公ぐらいじゃないかなあ。
「ダチ」、「ダチ」といかにもワイルドなフレンドシップを臭わせているけれども、結局さっそうとダチ公連れて行ったのが「漫画家の握手会」なのが笑える。
いやあ、今後も梅沢さんのダチ公の話を聴かされると思うと仕事に精が出るなあ!

つい最近知ったのだが、梅沢さんのプライベートの車がHONDAのSABERという、ちょっとしたヤン車であるらしい。一体ヤツは何を考えてるのか、ウィンドウにフルスモーク貼っていて、照明は紫のLEDなんだとか。もはやちょっとどころではないヤン車でした。

というわけで、梅沢は俺の大切なダチ公です。


| fabricio zukkini | 人物 | 23:13 | comments(6) | - | pookmark |
体脂肪が地球を狙う
先日会社の健康診断があった。
俺はまだ若く、診てもらう項目もさほど多くなかったのだが、これから先はもう老け込む一方、体に関するあれこれが良い方向に転じることも少なくなることが予想され、今後はこの健康診断にも何かと辛い目に遭わされることになるのだろうか。
バリウム部屋に向かう中堅サラリーマンのくたびれた背中を眺めながら、無駄な抵抗としりつつも軽く腹筋に力を入れてみたりなんかして・・


そんな健康診断が終わった翌週、会議に出るため久しぶりに本社へ行くとお昼休に案の定先の健康診断の話題で盛り上がっていた。そして「メタボ」というワードが飛び交う人々の輪の中には同い年の松田君が。

俺と同い年の松田君は太っている。デブである。
男の、しかも若手のデブだとやはり、健康診断などの後に話題の中心になってしまうのは仕方ないこと。さらに松田君の場合デブであることにさほどコンプレックスを感じておらず、むしろちょっとしたチャームポイントぐらいに思って時々自分が太っていることをネタにしているほどで、従ってこういうときに皆ネタにし易い。
松田君はいわゆる愛されデブなのだ。

聞けば松田君、体重は100kgに肉薄し、体脂肪率がなんと40%だったという。ウェストの数字は忘れたがメタボリックなのは間違いなく、ウェストを計る前、服を捲り上げないうちに「メタボです」と言われたそうだ。
看護士さんには予知能力があったのか、案の定松田君はメタボだった。

「体脂肪率40%」
それを聞いたとき、今現在、松田君と呼べるのは体全体の6割だけなのでは、と考えてしまった。
勿論「体脂肪=全て無駄」というのは乱暴な考えで、体脂肪率0なんてのは逆に不健全なわけだ。従って松田君が現在全体の6割というとこれは真実とは異なるのだが、脂肪は必要な量以外は基本的には無くても良いはずのものであるから全面的に間違っているとも思えず、そう考えるとやはり松田君の4割か、もしくは3割ぐらいは無駄な箇所であると考えざるを得なかった。

そしてもたげた一つの疑問・・・

《松田君の体脂肪率が50%を越えたら、それは松田君じゃなくなるのでは》

気付くと俺は「体脂肪=宇宙人」説について考えていた。
それはアメリカを本拠地とする体脂肪の宇宙人が、仲間を増やすべく考案された高カロリーの食品を世界中に発信すべく、全世界の欧米化を裏でプッシュしているという説だ。
民主化と称して占領した国にマクドナルドを作り、コカコーラを売りまくる。全て体脂肪の宇宙人の仕業だと。世界中で体脂肪の仲間を増やし、いずれ地球人の脳味噌を乗っ取り、支配するのだと!
そうして人が体脂肪率を上げれば上げるほど人の脳味噌は体脂肪の宇宙人の命令に抗えなくなり、より支配力を強めるべくさらにカロリーを求める。
気付かないうちに、ゆるやかに人間は支配されてゆき体脂肪率が60%を越えると完全に宇宙人に支配されそれはもうその人自身ではない。
今の松田君はつまりその一歩手前。一日のうち18時間程度は松田君だが、残りは体脂肪の宇宙人が牛耳っている。きっとそうだ。

「松田君の体脂肪率が50%を越えるともうそれって松田君じゃないよね」

俺が冗談ぽくそういうと、事務所で笑いが起きた。
それを聞いた松田君もいつものように笑ってい・・・な、かった。
いつもなら自分のデブネタに明るい笑顔で返してくれる松田君はそこにはおらず、ただこっちを見て作ったように口元を少し緩ませるだけ。

やや、これはマズいぞ、松田君、ひょっとしたら40%じゃなく、もうすでに50%越えていたんだろうか。あれは松田君ではなく、すでに一人の、一匹の体脂肪の宇宙人だったのだろう。俺の予感は的中。

となるとそれに気付いた俺の命が危ない。いつもはニコやかな松田君が俺を見たアノ鋭い両眼。
こうなるともうじき返って来る俺の体脂肪率もヒジョーに気になる。最近《クエ、クエ》という謎の指令がひっきりなしだし、きっと俺のところにも魔の手が忍び寄っているに違いない。
いやあ皆さん、地球危うしですぞ。

いや、待てそれとも松田君はただムッとしただけなのだろうか。
どちらにしろ俺の立場は良く無い。


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| fabricio zukkini | 人物 | 23:36 | comments(5) | - | pookmark |
その男、課長につき
築地で働いていたときにもの凄くお世話になったり、たまにもの凄く迷惑をかけられたりしたとても素敵な課長から突然電話がかかってきた。
前回の電話が確か「戻ってこい。お前のポストは用意してある。」だったので今度は何だろうか!ともの凄く楽しみに出てみたらば「山梨へ行こう。お前の部屋は用意してある。」だった。
なんだそりゃあ。

前も書いたが築地市場青果部門には社内外、卒の大中を問わず組織された課長の軍団があった。
軍団課長。アングラ系のハードコアバンドみたいな名前だが(実際やってることはハードコア)、今回はそんな軍団の構成員を集めて課長の大好きな山梨へ旅に出るのだという。
ふーん山梨ですか、みんなで楽しそうでいいですね。え、そこになんで娑婆で平和に暮らすボクが・・・

「大エースのお前も呼ばないと始まらないだろう。」

ヒィ!人を誘うときだけに出てくるお馴染みの「エース」の称号!
脱築と共にとうの昔に脱退したはずなのになぜかまだ軍団に所属していた俺・・・やったね終身名誉会員!

やってくる軍団のメンツ、そして明らかにノープランなその観光計画を聞けば聞くほどとてもネタになりそうだし、そうでなくても純粋にすごくたのしそうだったので「あ、ぼく行きます」と答えてしまった。
ちなみに泊まる宿は前の会社の保養所。「お前だから・・そうだな、特別タダで良い」という、宿代も思い出も早くもプライスレス決定なのだが、この辺りの豪快な職権乱用は相変わらず頼もしいほどだ。

《実家に帰ってキーエンスで働きます》と嘘をついてやめた男を優しく包む元職場の保養所の布団。その寝心地は如何に・・・!

「9月22日(月)の夕方6時集合だからよ」
「ええと分かりました、新宿集合ですか?」

「ばか、山梨だよ」

つづく・・・!



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| fabricio zukkini | 人物 | 17:32 | comments(6) | - | pookmark |
母の日/兄の話
今日は母の日である。そして明日は母の誕生日である。
母の日と母の誕生日が近い、もしくは重なるというのは毎年のことでもうずっと前から当たり前のことになっている。

そのため、母の誕生日に何か送るときは必ず「母の日も兼ねて」というのが通常だ。送る側にとっては手間も省けて都合が良い。
大体母親の誕生日が近くなってくるとまず兄から連絡が来る。
よほどの用事が無い限りは一年に4,5回ほどしか連絡を取らない兄だが、家族に何かイベントごとがあると必ず連絡をしてくるところはさすがの長男である。

そして次男の俺はというと、毎年兄に言われるまで母親の誕生日はおろか、散々テレビや街で宣伝してあり忘れようのないはずの母の日まで「忘れて」いるのである。

兄は、「今年は兄弟三人で何か贈ろう」という提案をしてきた。お、いいんじゃないか、と思った次の瞬間、衝撃の一言が地上に舞い降りた。
「例えばバラを、100本送りつけるとかどうかな」
口には出せなかったが「バラを100本」送る80sなヤツが俺の兄弟の中から現れるとは思って居なかったので俺は大変衝撃を受けた。
あくまで「例えば」なのだろうが、それでもバラ100本。兄は弟の俺がいうのもなんだが、結構「世の中を分かった男」だと思っている。何が格好いいかとか笑いどころや人物評価、一つ一つの行動や発言、兄弟であることを差し引いても、賛同できる部分が多く、小中高と少なからず影響を受けてきたのは間違いない。
だが同時に、これも弟がなまいきに言うことではないかもしれないが、少々‘とっぽい’部分があることは否めない。温和な下の2人の弟がビクつくほどに何かと攻撃的なのだ。
※とっぽいが分からない人は調べてください

気に食わなかったたらどんな相手にでも食って掛かる兄の姿勢が、一度楽しい夏のお祭、「いかだ大会」のときに爆発したときがあった。兄と俺、そして俺の友達が、毎年浜辺で開催される手作りいかだレース大会のバイトをやっていたときの話だ。

俺達は浜辺にゴールしてきたいかだを海の中で誘導する仕事をしていた。参加チームが多い割に観客が異常に少ないこのマフィアの地下レースっぽい大会は、運営委員会を名乗るオッサンたち複数と、俺と兄、俺の友人のたった三人の作業スタッフによって運営されていたのだ。
明らかな人数不足、当然ながら我々三人の若者はあっという間にパニックになってしまい、任せられていたゴール付近はあっという間にカオス状態になってしまった。
そしてそんな大忙しの俺達に命令ばっかりして自分は浜辺のテントの中で何もしない色白オッサンが一人いた。外から客観的な意見ばかり言って自分は何もしない、総務部課長系である。
案の定兄がそいつに切れてしまい猛ダッシュでテント内に突撃、「お前もやれ」と、嫌がるそのオッサンを無理やり海の中に引きずり込んだのであった。その光景はあの夏最大の衝撃だった。
オッサンは最初から何も手伝う予定が無かったのかその格好はYシャツにスラックス、そして革靴だった。それらは兄によって全て濡らされ、そしておっさんは入港してきた唐津信用金庫チームのイカダに突撃されたのだった。
オッサンが映画「タイタニック」の影の主役、「氷山」と化した瞬間だった。

兄の攻撃性は幼い時から開花していた。小さいとき、山で野グソをしていた兄は俺に「横で見張っとけ」と命じた。弟にことの一部始終を見せ付ける暴君に対し神様がお怒りになられたのか、兄はケツを拭いた葉っぱによってひどくかぶれてしまい、次の日皮膚科に行った。
「もう野グソはしたらいかん!」という文明社会ではもうありえないはずの説教を母親から受けた兄であった。

兄はただ攻撃的なだけではない。居眠り運転で170km/h出して免停(勿論見つかったときはもう少し減速していたらしいが)になった直後「ハァハァ、、、ダイアナ妃に勝ったぞ、、」と電話で言ってきたことがあった。返事のしようがなく黙っていると、何の危険を察知したのか「おい、、母ちゃんには絶対言うなよ」と付け加える兄。そういうチャイルドな部分も忘れていないのが俺の「兄」である。

兄のエピソードが随分とつづいたのだが、そんな兄が「バラを100本」と言うから俺は驚いた。だが同時にこれも兄の‘とっぽさ’の延長上、実は想定内のものなのかもしれないとも思える気がした。
ともかく俺は何とかバラだけは避けたくて「母ちゃんは現実的な性格だからバラより食い物のほうがいいのでは」と助言した。
現実的=食い物、儀式的=花、というのも旧石器時代の発想かもしれないが、兄はなぜか「そうだな」と納得した。
また、兄弟三人が全く別のところに住んでおり、そのうち一人がまだ学生であることから三人で何かを買うというのも却下された。
「お前もしっかりしてきたな」
兄は最後にそう言った。兄に褒められると弟は嬉しいものなのだが、今回は内容が内容なのでそこまで嬉しくなかった。

こうして俺は自分で母の誕生日・母の日のプレゼントを買うことになったのだが、何を買っていいのか毎年分からない。
よく考えたらいつも兄が代表して送ってくれていたような気がする。去年は何も送っていないし、おととしも記憶に無い。そういえば「お前は稼ぎが無いから要らない」とか「仕送りでプレゼントもらっても嬉しくない」とか、そういう理由で親のほうから断っていたようだ。だからといってそのとおりに何も贈らない俺も俺だが。

そうすると今回ようやく俺もまともに何か贈るということになるわけだ。
今の実家での親の生活を考えるとやはり両親2人だけの生活を楽しくしてもらえるようなものが良いかと思った。

俺の父親は酔っぱらうとよくフォークギターを取り出してきて昔の歌を母親と一緒に歌っていた。主に70年代のフォークだったようだが、お陰で俺も子供のときから昔の歌の良さを知り、後々色んな音楽を聴けるようになったように思う。
今の家に住む前、まだ小さな借家暮らしだった頃は親父と母ちゃんが酔っぱらってうたい出すと近所から「うるさか!」と毎回同じ声で怒られていたのだが、今思うと本当に迷惑だったと思う。
俺が高円寺に住んでいたとき俺の家の前で定期路上ライブをするバカがいたがあのときの罰なのだろうか。 何で俺に。

父親と母親が聴いていた歌の数々は子供の頃からタイトルも全て分かっていた。アマゾンにて70年代フォークソングのBOXセットをいくつか発見した俺は、それをプレゼントにしようと考えた。母親が家事をしているときに聴いてもらえればいいし、父親と一緒に車の中で聴いてもいいだろう。我ながらいいことを考えたと思った。
曲名を丹念に比較し、母親が吉田拓朗はそこまで好きじゃなかったとか、そういう細かな好みを盛り込んでかなり吟味した。

そして昨日、実家からメールがあった。どうもプレゼントが予定より一日早く届いたようだ。
そのメール、差出人はなぜか父親だった。
そのメールに書かれていたのは「俺、全部しっとるよ」と前置きしたあと、「うれしか!」の5連打、そして「ありがとう!」の5連打だった。
なんであれ感謝されるのは悪くない。

母の日、母の誕生日なのだが、喜んだのはどうやら父のほうだった。
こうなると父の日に何を贈ればいいのかわからなくなった。

| fabricio zukkini | 人物 | 22:09 | comments(7) | trackbacks(0) | pookmark |







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